小菅努の商品アナリスト日記

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原油価格が1年1カ月ぶり安値、株価と同時急落の意味

原油価格が1年1カ月ぶり安値、株価と同時急落の意味

11月20日のニューヨーク取引時間中に、値下り傾向にあった国際原油価格が改めて急落した。NYMEX原油先物相場は、1バレル当たりで前日比3.77ドル安の53.43ドルととなっている。同日の安値は52.77ドルであり、僅か1営業日で最大7.7%の下落率を記録している。これは2017年10月26日以来、約1年1カ月ぶりの安値更新となる。

背景としては、前日に続いて米国株が大きく値崩れを起こしていることがある。米中首脳会談の開催が近づいているが、貿易戦争の先行き不透明感が払しょくできていないことが嫌気されている。更には新型「iPhone」の販売不振が警戒されているアップル株が急落する中、20日の米株式市場ではダウ工業平均株価を構成する30銘柄が全て下落する総売り状態になっている。

株価と原油価格とは、必ずしも完全に連動する必要性はない。寧ろ原油価格の下落は企業収益に対してポジティブな面もあり、実際に今夏以降に国際原油価格が70ドル台に乗る場面が増えると、株安リスクの一つとして認識されていた。

無題

















しかし現在のマーケット環境は、株式買い・原油買いという一部ファンドが採用してきたグローバル・マクロ戦略の破たんが警戒されている状況であり、株式市場から投機資金の引き揚げが行われると、原油需給動向とは関係なく原油市場からも投資資金が引き揚げられることになる。「株安→原油安」と「原油安→株安」で「卵が先か鶏が先か」のような二つの大きな流れが発生しており、こうした負の流れが続くと詳細な企業業績環境や原油需給環境を巡る議論は意味を持たなくなってしまうことになる。

原油価格の視点であれば、基礎にあるのは需給環境(とその見通し)であり、現在は厳しい状況にあることは間違いない。国際エネルギー機関(IEA)は、仮に石油輸出国機構(OPEC)の産油量に変動がなければ、2019年は年間を通じて供給過剰状態に陥るとの見通しを示している。12月6日のOPEC総会に向けて減産対応を巡る協議も行われているが、まだ最終合意に至るのかは不透明感が強い。(参考:原油価格急落でも減産を拒否するロシアが考えていること

オプション市場の動向を見る限り、原油価格に関しては50.00ドルを防衛ラインとみている向きが多く、このまま一気に50ドル割れから更に大きく値崩れを起こすのかは疑問視される。産油国の財政環境、シェールオイルの生産環境などにも影響が及びかねない価格水準であり、売られ過ぎ感を示す指標も数多い。

ただ、株価と原油価格が同時に急落する現象は、良好な実体経済環境・見通しを背景とした株高・原油高のストーリーに疑問を持つ向きが増えていることを示している。そして、この種の局面では、短期スパンだとファンダメンタルズとは乖離した価格形成が行われることも少なくない。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)原油価格が1年1カ月ぶり安値、株価と同時急落の意味(Yahoo!ニュース)

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「炭鉱のカナリア」に異変、安全資産としての金価格

「炭鉱のカナリア」に異変、安全資産としての金価格

今年の金市場においては、「金は安全資産としての役割を終えたのではないか?」との議論が一種のブームになっていた。

トランプ米政権の「アメリカ・ファースト」と称される通商政策は世界経済に大きな不確実性をもたらしたが、こうした中でも金価格は一向に上昇せず、寧ろ投資家は金を売却する傾向を強めたことで、金の安全資産性が疑問視されたのである。貿易戦争が勃発しても金が買われず、逆にドルが買われたということは、アメリカ一人勝ちの世界にあって、投資家がドルを新たな安全資産として認識し、伝統ある安全資産としての金の時代が歴史的役割を終えた可能性を示唆していた。

しかし、10月に米国発で世界の株式市場、更には金融市場が動揺を見せると、金市場に対して投機マネーの流入が再開され、代わってドルの上値が重くなり始めている。まだ金価格の値位置は決して高いとは言えないが、COMEX金先物価格は8月16日の1オンス=1,167.10ドルをボトムに10月上旬にかけては1,200ドルの節目水準で揉み合う展開が続いていたが、10月26日には一時1,246.00ドルまで上昇し、7月13日以来の高値を更新している。金の輝きが強まり始めていることは間違いない。

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象徴的なのが、株式市場で取引されている金上場投資信託(ETF)の投資残高である。金ETFは投機資金の流出入に応じて金保有高を調整するが、今年は5月から9月まで5か月連続で金ETFを売り越していた米国人投資家が、10月には半年ぶりに買い越しに転じたのである。これまで、いくら貿易戦争が深刻化しても、国際政治環境が不安定化しても一向に関心を持たれなかった金に、投機マネーが流入し始めている。

10月に米国人投資家が購入した金ETFは僅か12.4トンであり、過去5か月の累計で149.4トン売却されていたことを考慮すれば、誤差の範囲内と言えるかもしれない。しかし、金価格が上昇傾向を見せ、金ETF市場に対する資金が流入し始めていることは、投資家がこれまで楽観視していた株式市場、そして実体経済環境にリスクの芽を見始めていることを示している。

金価格の変動要因は多岐にわたるため、一概に金価格が上昇したら株式市場が危険とは言い切れない。例えば、2008年の世界同時金融危機の時は株価急落に先行して金価格が急伸していたが、2016年や17年は株式相場と金相場が歩調を合わせて上昇している。

ただ、11月16日には米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長が政策金利について「中立水準に留まることは理にかなっている」との認識を示すなど、これまで中立金利を上回ることを前提としていた米金融政策環境にも変化の兆候が見受けられることは確かである。

これまでは、貿易戦争が勃発していると言っても米実体経済は堅調であり、金融政策も引き締め的なスタンスを維持できて来たことが、株高・ドル高を促し、配当も金利も生まない金を保有する必要性は一貫して低下していた。しかし、いよいよ貿易戦争が実体経済に影響を及ぼし、それが米金融政策の利上げ打ち止め論にまで発展するのであれば、株式相場が上昇を続けるのは難しくなり、ドルの上昇地合にもブレーキが掛かる可能性が浮上する。

まだ現在の金価格は実体経済減速、米利上げサイクル終結が前倒しされる「可能性」を示唆するレベルに留まっているが、ここから金価格が更に本格的に上昇し始めれば、それはもはや米経済が利上げに耐えられなくなるリスクを示すことになる。

冒頭で「金は安全資産としての役割を終えたのではないか?」との議論を紹介したが、これまで貿易戦争でも金価格が上昇しなかったのは安全資産に対する投資ニーズを高めるレベルの危機とは評価されていなかっただけである。本当に安全資産が必要とされれば金価格は上昇することになる。金の安全資産としての役割は終わっておらず、金価格が「炭鉱のカナリア」として危機発生を警告し始めていることには注意したい。

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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)「炭鉱のカナリア」に異変、安全資産としての金価格(Yahoo!ニュース)

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急騰から急落に一変した原油

急騰から急落に一変した原油
OPEC総会に向けて動くか?

9月までと10月以降とで、国際原油市場を取り巻く景色は一変した。米政府のイラン産原油に対する制裁方針を受けて、5月以降の原油市場ではイラン産原油の供給が落ち込んだ分を他産油国でカバーすることは可能か否かが、中心テーマとなっていた。イラン産原油の供給が日量100万バレル規模で喪失された際に、石油輸出国機構(OPEC)やロシアが十分な増産対応を行えるのか、不確実性に対する警戒感が原油相場の急伸を促していた。

しかし、9月以降はサウジとロシアを筆頭に大規模な増産対応が行われた結果、国際原油需給バランスは安定化し、逆に供給過剰が警戒される状況に変わっている。即ち、増産対応の行き過ぎが原油相場の急落を促がしている。5月と10月の産油量を比較してみると、イラン産原油の供給は日量53万バレル減少している。一方、サウジ産原油の供給は73万バレル増加しており、過剰対応が行われているのは明らかである。OPEC全体の産油量が増加トレンドを形成していることは、産油国がマーケットの警告を素直に受け止めて行動した証拠と言え、イラン産原油の脅威に立ち向かうという「ミッション」は一応の完結を見たと評価できる。

一方で、10月以降の原油相場急落は、産油国に対して逆に減産対応が必要とのメッセージを送っている。11月11日に開催された減産監視閣僚委員会(JMMC)では、サウジアラビアなどが日量100万バレルの減産対応を主張し、OPEC各国からは支持を得られたと報告されている。一方で、ロシアは来年半ばには需給が均衡化し、改めて供給不足化になるとの見通しから、減産対応は不要との立場を崩していない。また、トランプ米大統領は原油相場が1バレル=60ドルを割り込んだ状態でも、OPECに対して減産を行わないようにけん制する発言を行っている。

原油相場が急落しているのは間違いのない事実だが、多くの不確実性から産油国はどのような対応を行うべきなのか、コンセンサス形成に手間取っている。OPECの最新の推計によると、2019年のOPEC産原油に対する需要は今年から100万バレル程度減少する見通しでだが、今後のイランやベネズエラ、更にはリビア、ナイジェリアなどの生産動向によっては、今後の需給見通しが一変する可能性も抱えている。

12月6日にはOPEC総会を控えており、そこでOPECやロシアなどは2019年も協調体制を維持するのか、維持するとすればどのような形にするのかを合意する必要がある。このまま過剰供給懸念への対応を見送り続ければ50ドル割れのリスクもある一方、OPEC-ロシアのラインで需給・価格管理を継続する方針を示せば、原油安には終止符が打たれ、過熱感解消の形でリバウンド局面に移行する。OPEC総会まで残された時間は多くなく、荒れた相場展開が続くことになる。

(2018/11/14執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年11月19日「私の相場観」

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原油価格急落でも減産を拒否するロシアが考えていること

原油価格急落でも減産を拒否するロシアが考えていること

国際原油価格が急落する中、マーケットの焦点は産油国が一致して減産対応を見せることができるか否かになっている。

国際エネルギー機関(IEA)は、最近の増産によってイラン産原油の供給減少に対応するための「ミッションは終わった」と総括し、仮に石油輸出国機構(OPEC)の産油量が現行水準を維持した場合、2019年は需要期も含めた年間を通じて供給過剰になるとの見方を示したている。

また、OPECの月例報告でも2019年には需要が日量129万バレル増加するものの、非OPECの供給量が223万バレル増加する結果、OPEC産原油に対する需要は18年の3,259万バレルから19年には3,154万バレルまで105万バレル減少するとの強い危機感を示している。10月時点のOPEC産油量は3,290万バレルであり、仮にこのままOPECが何も行動を起こさなければ、19年は136万バレルの供給過剰状態に陥るとの見通しになる。

世界の石油在庫は急速に減少しているとは言え、14年の原油相場急落前と比較すると依然として高水準である。経済協力開発機構(OECD)加盟国の商業在庫をみても、原油価格急落前が26億~27億バレル程度だったのが、足元では28億~29億ドル水準になっている。大規模な供給不足状態を作り出す必要性は薄れているが、まだ原油需給リバランスのプロセスが完結したとまでは言えない。

このため、OPECやロシアなどが展開している協調減産の監視委員会(JMMC)では、サウジアラビアが日量100万バレルの減産を提案したことが明らかにされている。また、140万バレルの減産案が協議されたとの報道もある。OPECの想定しているOPEC産原油への需要が約100万バレル減少すること、想定される過剰供給幅が約140万バレルであることを考慮すれば、こうした数値の提案に違和感はない。

実際に、OPEC加盟国はこの提案に対してほぼ支持を表明しており、具体的の減産幅について詰めの協議はあるものの、過剰供給化に対して何らかの政策対応が必要という点では、コンセンサス形成が進んでいる。

このため、OPECやロシアが2019年も原油需給管理に責任を負うスタンスを明確化すれば、原油相場が値崩れを起こす必要性は乏しく、原油価格の急反転といった展開も想定できる。しかし実際には、ロシアが明確に減産対応を否定しているため、OPEC加盟国と非加盟国が結束して過剰供給化を阻止する方向性を打ち出せず、原油価格は下げ一服となったものの安値修正を進められない状態に陥っている。

なぜ、ロシアは原油安のリスクを高めている過剰供給見通しに対して、減産対応を拒否しているのだろうか。

■ロシアが過剰供給でも減産しない理由

ロシアのノバク・エネルギー相は、JMMCでの協議から減産議論が活発化していることに対して、ロシアは減産の必要がないと考えていると明言している。ロシアのプーチン大統領も15日、OPECとの協力は「明らかに必要だ」としつつも、記者からの減産対応の有無についての質問に対しては明言を避けた。ロシア系メディアからは、複数の政府高官が減産対応の可能性を否定しているとの報道が行われている。

理由1)

ノバク・エネルギー相は、確かに来年上期に向けては季節要因の影響で供給が過剰化する可能性があるものの、年中盤には均衡化し、逆に供給不足状態に陥る可能性があることを理由として掲げている。すなわち、供給過剰のリスクをOPECと共有していないのだ。これが現時点での公式見解である。

理由2)

財政環境の改善が進んでいる影響も大きいだろう。2017年にロシアがOPECとの協調減産に踏み切った背景には、原油収入の落ち込みで財政環境が悪化し、通貨ルーブルが急落する中、経済破綻の可能性さえ警戒された危機感があった。ウクライナ情勢を巡って欧米諸国との対立も深まる中、中東戦略へのコミット強化の流れもあってOPECとの協調に踏み切った。

しかし、ロシアの国家予算で想定されているウラル産原油は1バレル=40ドル程度であり、急落したとは言っても現在の65ドル水準であれば、必ずしも危機感は高まらない。中東との比較では、財政面での原油高要求圧力が低下しており、これ以上の原油高を必ずしも必要としていない。

実際にプーチン大統領は「現在と最近の70ドル前後の状態は、我々にとってパーフェクトだ」として、問題視していないことを明らかにしている。

理由3)

ロシア産原油に対する引き合いの強さがあり、需要減退による供給削減ニーズが高まっていないことがある。11月から米政府のイラン産原油に対する制裁が再開されたが、イラン産原油とロシア産ウラル原油と油種の面で近似性があり、イラン産原油の代替需要はウラル原油の需要を高める傾向にある。実際、足元では過剰供給が指摘されているが、アジア向けを中心にウラル原油に対するプレミアムは寧ろ上昇傾向にあり、旺盛な需要に対して供給を増やすとのロシアの戦略には合理性がある。

理由4)

また、ここにきて見え隠れしているのが米国との関係である。中間選挙で民主党が過半数を獲得した米議会では、トランプ米大統領とロシアとの不正な関係性を巡る追及が活発化しているが、11月11日にフランスで開催された第一次世界大戦終結百年に合わせて、プーチン大統領とトランプ大統領が会談を行ったことが明らかになっている。

プーチン大統領は15日、その場で「世界の石油市場」についても協議を行ったことが明らかにされている。具体的な内容は明らかにされていないが、その直後にトランプ大統領はTwitterで「サウジアラビアや石油輸出国機構(OPEC)が減産しないことを望む。供給に基づけば、石油価格はもっと下落するはずだ!」と投稿している(参考:原油相場急落でも、トランプ大統領が産油国の減産議論をけん制する理由)。

プーチン大統領からは何を話し合ったのかは明らかにされていないが、トランプ大統領側からは改めて原油価格の高騰を招くような政策を取らないように要請があったことは間違いなく、ロシアが米国との関係性の視点から政策調整を渋っている可能性がある。

理由5)

ロシアとしては、原油価格の過度の下落は望まない一方、過度の上昇は望んでいないこともある。ロシア国内では、2010年代前半の原油価格高騰が過剰投資を呼び込み、シェールオイルなどタイトオイル増産を急増させた経験の再現を警戒する声が強い。また、過度な原油高は再生可能燃料など代替エネルギー開発を加速させる可能性もあり、もちろん原油価格は歳入面では高い方が好ましいが、長期視点では既に十分な価格水準と評価している模様だ。

■今後は?

ロシアが産油政策の軸足をOPECとの協調に置いている以上、減産対応を求めるOPECの声を完全に無視することはできない。特に近年はサウジアラビアとの首脳会談などトップ外交で一気に減産対応を決めることが増えており、11月30日~12月1日の20カ国・地域(G20)首脳会合などに合わせて、何らかの意見交換が行われ、新たな動きが出てくる可能性はある。

ただ、ロシア単独の視点であれば更に5~10ドル程度の原油安は許容範囲となっている可能性が高く、12月5日のOPEC総会、加盟国・非加盟国との会合に向けて、まだロシアの減産合意を取り付けることができるのか不確実性が大きい。仮にロシアが減産対応を拒否し続ければ、OPECのみで減産対応を強化する可能性は低く、原油価格の低迷状態は長引くことになる。OPEC総会までにロシアが減産対応を決断するか否か、これが当面の原油価格動向を決定づけるだけに、現在は極めて重要な時間帯になる。

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金とプラチナとパラジウム、どれが一番高い?

金とプラチナとパラジウム、どれが一番高い?

もし、貴金属の「金」、「銀」、「プラチナ」、「パラジウム」のいずれかを1キログラム(kg)貰えるとしたら、どれを選ぶべきだろうか。

かつては、プラチナを選ぶのが正解だった。金よりも希少性が高く、歴史的にこの4種類の貴金属の中では最も高額だったためだ。しかし、近年はプラチナ価格が低迷している結果、現時点では金を選ぶのが正解になっている。11月15日の東京商品取引所(TOCOM)の期先価格をみてみると、1グラム当たりで金が4,409円に対して、プラチナは3,036円となっており、1kgだと金の440.9万円とプラチナの303.6万円との間には137.3万円もの差が存在している。

ちなみに、最も選んではいけないのが銀であり、1グラム当たりで51.6円となっている。1kgでも5.2万円であり、若者向けの宝飾品でも多用できる価格水準であることが確認できる。

一方、パラジウムとなるとその値段が他の貴金属と比べて割高か割安かを言える人はあまり居ないだろう。身近な所では歯科治療の詰め物、宝飾品などにも使用されているが、主な消費先は自動車などの触媒用であり、一般の人が金やプラチナの地金やコインを購入することはあっても、パラジウムの地金やコインを購入したことがある人は少ないだろう。

市場規模としては、2017年実績で年間需要が1,015万オンス(1オンス=31.1グラム)とプラチナの782万オンスを大きく上回っているが、街中の貴金属買い取り商でも金とプラチナの価格は提示しても、パラジウムの価格を提示している所は殆どなく、パラジウムの宝飾品を持っている人も意識していないことの方が多いかもしれない。

しかし、このパラジウム価格が今急騰しているのだ。1グラム当たりだと3,788円となっており、既にプラチナ価格を大きく上回っている。今や金価格との価格差も急速に縮小しており、「4つの貴金属で最も高額なのがパラジウム」という時代が近づきつつある。

冒頭の問い掛けであれば、現時点では金を選択するのが正解である。しかし、ドル高の影響で金価格の低迷状態が続く一方、パラジウム価格の高騰が続く中、もしかしたら2019年中にもパラジウムを選択するのが正解になりそうな状況になっている。

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■供給不足が深刻化しているパラジウム
円相場の影響を受けないNYパラジウム先物相場でみると、11月15日の取引で過去最高値を更新している。米中貿易戦争の影響もあって8月16日には1オンス=815.20ドルまで値下がりしていたのが、11月15日には一時1,161.50ドルまで値上がりしている。

背景にあるのは、需給ひっ迫化に対する極めて高いレベルの警戒感である。世界的に自動車排ガス規制の強化が進み、しかもディーゼル車の不正問題でプラチナよりパラジウムへの依存度の高いガソリン車のシェアが回復する中、パラジウムの需要は急増している。今年は1,029.7万オンスが予想されているが、これは5年前の2013年の908.9万オンスと比較すると13.3%の急増である。

一方、その間に鉱山生産は646.8万オンスから665.3万オンスまで2.9%しか増加していない。スクラップ供給が増えているため、総供給量だと823.8万オンスから896.9万オンスまで8.9%増加しているが、需要の伸びに対応しきれていない。もはや供給不足状態が当たり前の状態になっている。

本来であれば大規模な増産を進めるべきだが、パラジウムと同時に産出されるプラチナや非鉄金属相場などの低迷もあって、パラジウム相場が高騰してもなかなか増産圧力が強まらない。一方、世界経済の成長と連動して需要は着実に伸びており、来年、再来年と供給不足の量は逆に拡大する見通しになっている。

しかも、近年は米国とロシアとの関係悪化でロシアからの供給が大きく落ち込む可能性まで警戒されており、パラジウムの現物調達が難しくなっている。米国がロシアに対する制裁をちらつかせただけでアルミとパラジウムが急騰した例もある。

少し専門的な話をすると、NYMEXパラジウム先物相場だと、2018年11月渡しが1,154.00ドルに対して、約1年先の来年12月渡しは1,095.10ドルとなっている。通常だと、将来に渡されるものの方が、それまでの間の保管コストなどが加算されるために割高になるが、現在は在庫保管コストなどが必要ない直近の受け渡しの方が割高になっているのである。専門用語でこれを逆サヤと言うが、足元の供給不足が深刻化した際に発生する現象である。10月初めまで原油価格が高騰していた際にも、これと同様の逆サヤが形成されていた。

需要は伸びているものの、供給対応の目途が立たない状態に陥っているのがパラジウムであり、このままの状態が続くと貴金属で一番高価なのはパラジウムという状態が実現しそうだ。冒頭の無料で貴金属を貰えるようなシチュエーションは想定しづらいが、もしそのような機会があれば金でもプラチナでもなく、パラジウムを選ぶのが、もしかしたら現時点でも正解かもしれない。

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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