小菅努の商品アナリスト日記

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天然ゴム、季節性の「賞味期限」は残り少ない

〔アナリストの目〕天然ゴム、季節性の「賞味期限」は残り少ない

東京市場の天然ゴム先物相場(RSS)は、(先ぎり継続足が)2018年11月21日の151円ちょうどをボトムに、年明け後の1月中旬に190円台を回復する展開となっている。21日時点では最大で28.1%の上昇率を記録、昨年5月30日以来、約6カ月半ぶりの高値を更新した。

基本的には、季節要因の影響が大きい値動きになっている。天然ゴムの生産サイクルが減産期から生産期への移行局面を迎えるのと前後して産地相場が上昇に転じ、それにけん引される形で期先限月も値位置を切り上げるという専ら供給サイドの要因に基づいている。当ぎりベースで見ると、昨年11月中旬の130円台前半に対し、足元では200円台を回復しており、季節要因に基づく上昇圧力がいつまで持続するかがゴム相場の焦点になる。

減産シーズンに向かうとはいえ、世界の自動車市場が縮小傾向を強める中、需要環境は決して良好と言えない。中国の18年の新車販売台数は、天安門事件が発生した翌年以来となる28年ぶりに減少した。

減税による需要先取りの反動、ナンバー規制といった特殊要因の影響もあるが、経済成長の鈍化が新車販売の鈍化を促すのは世界的なトレンドになっており、タイヤメーカー各社も決算発表において、今後の需要環境の不確実性を指摘している。季節要因の支援が弱まれば、ゴム相場が大きく上昇する必要性は薄れることになる。

そこで過去のデータを検証してみると、ゴム相場(期先)は一般的に11月から翌年2月にかけて上昇しやすい傾向が見受けられる。10年間の平均値幅だと、12月の20円44銭高が最大であり、次いで1月の10円50銭高となる。

一方、2月に入ると上昇圧力が弱まり、2〜6月は前月比マイナスとなる傾向が強い。減産圧力がピーク化するのは4月の傾向が強いが、期先の受け渡し時期は生産期のピークを迎える秋で、必然的に季節性を反映した上昇圧力が鈍ることになる。

実際、足元でも当先の逆サヤ(期近高・期先安)傾向が強くなっており、当ぎりの上昇に期先が対応し切れなくなっていることがうかがえる。昨年も、期先は11月中旬から上昇トレンドを形成したが、1月中旬にピークアウトし、その後は本格的なダウントレンドに転換している。

足元の上昇圧力に関しては、残り1カ月程度の「賞味期限」が残されているか否かの評価となり、200円台回復の可能性があるものの、そこからさらに上昇トレンドを大きく発展させるのは難しいだろう。

仮に、季節性に基づく上昇トレンドの一服、反転を阻止する動きがあるとすれば、生産国の政策介入である。タイ農業省は今後5年で生産量の約3分の1を削減する必要性を訴えており、インドネシア、マレーシアなどの主要生産国と協調して供給圧力を抑制できれば、減産期明け後の増産懸念を後退させる形で、高値維持が可能となるシナリオは残されている。

ただ、原油とは異なり天然ゴムの供給調整が成功した例は少なく、現在は財政面での制約も強い。市況対策の思惑も足元の産地相場を下支えているが、石油輸出国機構(OPEC)並みの強力な市況対策を打ち出せなければ、季節性の支援が薄れる動きと連動して、ダウントレンド再開のリスクが高まる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(2019/1/22執筆)
(出所)時事通信社「アナリストの目」2019/01/22

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金相場は長期底打ちの可能性

金相場は長期底打ちの可能性
安全資産への資金シフトの時

昨年10月の株価急落以降、金相場を取り巻く環境が徐々に強気ムードに変わり始めている。グローバル経済の減速懸念が強まる中、金融市場に強いストレスが見受けられ、ボラティリティの高まりが安全資産に対する投資ニーズを高めているためだ。もともと、米国株の過熱感を指摘する声は強く、昨年も2月と10月に大規模な調整局面を経験している。利益や売上高に対して株価水準が割高な状態にあることを示す指標は多い。それでも実体経済や企業業績の上振れ傾向が続く中、投機マネーの株式市場に対する流入傾向は維持されていた。しかし、ここにきてグローバル経済が想定よりも強い下振れ圧力に晒されるとの警戒感が強まる中、株価が「調整」ではなく「ピークアウト」局面を迎えているのではないかとの懸念が浮上している。

米経済はトランプ政権の打ち出した減税政策の影響もあり、2018年には過熱感さえある急成長を見せた。しかし、こうした政策効果が19年後半には薄れる一方、米中貿易戦争や欧州政治環境の不安定化などが経済を必要以上に下押しするリスクが警戒される中、資産防衛やリスクヘッジの観点から、金市場に対する資金流入が加速し始めている。

象徴的なのが金上場投資信託(ETF)市場であり、昨年10月以降はほぼ一貫して投資残高を積み増している。昨年も欧州勢は政治環境の不安定化を背景に年初から金ETFを買い進んでいたが、米系投資家は安全資産に対する投資ニーズを見出すことができず、逆に金ETFを売却し、金利上昇で保有メリットが高まるドルや、実体経済の底固さを背景に強含む株式市場に資金をシフトさせていた。しかし、10月の株価急落後は米系投資家も金ETFの買い手に転換し、リスク投資に対する緊張感が著しく高まっていることが示唆されている。

そこに浮上してきたのが、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止議論である。これまでFRBは、経済環境は利上げを必要としているとの判断から、断続的な利上げ対応が好ましいとの判断を下してきた。それは12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも変化はなく、19年中は2回の利上げを当局者が想定していることが示されていた。しかし、年末・年始を挟んで金融市場のボラティリティが一段と高まる中、利上げサイクルを終了すべきか否かは別としても、いったんは利上げを停止して様子をみるべきとの意見が勢いを増している。マーケットでは、このまま利上げサイクルが終了するのではないかとの見方も強く、米金利低下・ドル安圧力も金相場を支援し始めている。

2009年から続く株高トレンド、そして15年から続くFRBの利上げサイクルが同時に終了時期を迎える可能性が高まる中、金相場の長期ダウントレンドに終止符が打たれるか否かの分岐点に差し掛かっている。金相場の「売り材料」が「買い材料」への転換を完全に実現すれば、金相場は一時的な反発ではなく長期上昇トレンド形成に向かおう。
(2019/01/16執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年1月21日「私の相場観」

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50ドル台を回復した原油相場

50ドル台を回復した原油相場
減産開始で下値不安は後退

NY原油先物相場は、昨年12月24日に1バレル=42.36ドルまで値下りしたが、年初からは安値修正の動きが活発化しており、約1カ月ぶりに50ドル台を回復する展開になっている。年末・年始で国際原油需給環境・見通しに大きな変化が生じている訳ではないが、年初からは昨年12月に石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどが合意した日量120万バレルの減産対応が開始されることもあり、投機売りのポジションが巻き戻されている。

昨年12月時点では、減産合意が実現したものの、1)合意内容が着実に履行されるのか、2)原油需給リバランスに十分な規模なのかが疑問視され、原油相場の下げ止まりを促すことに失敗していた。しかしロイター通信の調査だと、サウジアラビアは昨年12月時点で既に日量40万バレルの減産に踏み切っており、少なくとも減産合意に関しては、高いレベルの遵守率が期待できる状況になっている。昨年10月以降の原油相場急落に対する産油国の危機感は強く、ロシアやUAEなどの主要産油国も減産合意の着実な履行に意欲を示している。

問題は、日量120万バレルの減産対応が需給バランスの安定化に十分な規模か否かだが、マーケットでは需要端境期となる1~3月期には供給過剰が発生する可能性があるものの、4~6月期以降には逆に供給不足状態に回帰する可能性が高いとの見方が強い。

グローバル経済の減速懸念で需要下振れに対する警戒感も根強いが、原油価格の水準が大きく切り下がったことで、特に大幅な落ち込みは想定されていない。国際エネルギー機関(IEA)なども、2018年実績と同レベルかそれを上回る需要の伸びを想定している。もちろん、グローバル経済がリセッション(景気後退)に陥るのであれば、18~19年にみられたような原油相場の低迷状態が支持されることになり、改めて40ドル水準まで値下りする。ただ、成長鈍化に留まり、原油相場の急騰が見られないのであれば、需要環境について過度に悲観的になる必要はないだろう。

今後は減産合意を着実に履行できるか否かが焦点になるが、日量120万バレルの減産対応が早期に実現するのであれば、40~45ドル水準は下げ過ぎとの評価になり、50~55ドルのレンジに過熱感は乏しい。株価やドル相場の動向にも注意が必要だが、オーバーシュート気味の安値修正を打診する局面になる。

一方で、現在の需給見通しでは本格的な価格上昇までは許容できない。需給リバランスが実現するためには、あくまでもシェールオイル生産が現在の見通しに留まることが必要であり、原油高が加速してシェールオイルの増産ペースも加速するような事態までは許容できない。仮に60ドルを大きく上抜くような展開になると、改めて供給過剰リスクへの対応を迫られることになり、当面は55ドル前後の値位置が上値目途になろう。
(2019/01/09執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年1月14日「私の相場観」

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メキシコペソと他高金利通貨との違い

メキシコペソと他高金利通貨との違い

メキシコ中央銀行は12月20日の政策決定会合において、政策金利を0.25%引き上げ、8.25%としました。12月1日に就任したロペスオブラドール新大統領の経済政策による先行き不透明感に対して、いち早く対応を示した格好になります。

新興国と言えば、トルコを筆頭に高インフレ環境でも経済成長を重視して利上げを躊躇する傾向が強いものですが、メキシコ中銀は他の新興国中銀とは明らかに異なる政策スタンスを採用しています。同一視していると、メキシコペソの持つ実力を見誤ります。

メキシコ中銀は、多少の経済成長の下振れを容認してでも、通貨価値のコントロールを重視するスタンスを採用しており、インフレ抑制のためであれば躊躇なく利上げに踏み切ります。これは、新興国通貨・高金利通貨としては、他新興国にはみられない大きなメリットになります。どうしても、新興国通貨や高金利通貨とひとまとめにされがちですが、インフレによる通貨価値の棄損が大きな問題となっているトルコや南アフリカとは同一視すべきではない通貨です。

逆に他新興国のような急激な経済成長は見込まれていませんが、近年の傾向としては米国に対して5~6%前後のプレミアムを加算した金利環境を維持することで、海外投資家の資金をメキシコに還流させるシステムを構築しています。8月に新興国通貨が軒並み値崩れを起こした局面でもペソは底固さを維持したことは、金融政策が有効に機能していることを示しています。

2018年は年初の対円レートを100とすると、12月24日時点で南アフリカランドが83.1、トルコリラが70.2まで下落したのに対して、メキシコペソは97.0と、ほぼ年初の相場水準を維持しています。ドルの98.0はアンダーパフォームしましたが、1)米国の4度にわたる利上げ、2)原油相場の急落、3)第4四半期のリスクオフ環境、5)ロペスオブラドール新政権の不透明感とネガティブ材料が重なる中で、安定した通貨環境を実現したことは、メキシコ中央銀行の通貨管理能力の強さを明確に物語っています。

メキシコのインフレ率も5%前後と決して低くなく、中銀も一時的との比較ではインフレ環境が安定化しているものの、まだ高過ぎるとの評価を下しています。しかし、実質金利がマイナス化するような利上げ対応の遅れはみられず、高金利通貨のメリットを享受する投資スタイルであれば、メキシコペソにはトルコリラや南アフリカランドにはない大きなメリットがあります。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)「大起ニュース」2019年1月7日

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今年の原油価格は低位安定へ

今年の原油価格は低位安定へ
40~65ドルのレンジ想定

2019年のNY原油先物相場は、1バレル=40~65ドルをコアレンジとして想定している。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界石油需要は前年比で日量140万バレル増が見込まれている。世界経済に対する下振れ圧力が強まるも、原油価格の水準が大きく切り下がる中、今年の130万バレル増とほぼ同水準の需要拡大圧力が想定されている。米中貿易戦争がいつまで続くのかといった不確実性も抱えているが、深刻な需要減退リスクまでは想定されていない。

一方で、米エネルギー情報局(IEA)の推計では、米国の産油量は18年が前年比で日量153万バレル増だったのに対して、19年は118万バレル増が想定されている。増産ペースは鈍化するものの、シェールオイルの増産圧力は続くことで、世界石油需要の伸びの約85%は米国の増産によって吸収されることになる。18年はイラン産原油の供給が急激に落ち込んだことで、大幅な在庫積み増しは回避されたが、今後はイラン産原油の供給量が低迷状態で落ち着きを取り戻すと、国際原油市場は改めて過剰供給に対する懸念と向き合う必要性がある。

石油輸出国機構(OPEC)やロシアは1~6月期に日量120万バレルの減産対応を行うことで合意しており、IEAの推計では減産合意が100%遵守されれば、4~6月期には再び在庫取り崩しが開始され、年後半の需要期も一定規模の減産対応が継続されるのであれば、大幅な供給過剰は阻止される可能性が高い。

ただ、あくまでもシェールオイルの増産圧力が現在の想定レベルに留まることが必要不可欠であり、改めて原油価格を大きく押し上げることで、シェールオイルの増産ペースを加速させることまでは許容されていない。このため、60~65ドル水準が年間の高値圏になる見通し。仮にここから更に70ドルといった価格水準を打診するのであれば、地政学要因に基づく供給障害の発生が求められる。リビア、ベネズエラ、ナイジェリア、そしてイランなど供給リスクを抱えた地域は多く、これらの地域で供給障害が発生し、シェールオイルの増産加速が許容できる状態になれば、65ドル水準を上抜く可能性が浮上する。

逆に値下りリスクとしては、世界経済の減速が加速し、株価急落などリスクオフ化が決定的になる展開が想定される。ただ、40ドル台中盤ではシェールオイルの増産圧力にブレーキが掛かり、また、OPECやロシアなど伝統的産油国も財政難から市況対策に乗り出す可能性が高く、40ドル割れを打診するような展開が長期化することもないだろう。

今後もシェールオイルの大規模な増産を前提条件にせざるを得ず、過度の原油高が要求されるのは、大規模な供給障害が発生した時に限定されることになる。18年は米政府の対イラン制裁がその役割を果たしたが、それに匹敵する供給障害が発生しないのであれば、50ドル台をコアにOPECとシェールオイルの共存できる環境を目指すことになる。
(2019/01/02執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2019年1月7日「私の相場観」

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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