小菅努の商品アナリスト日記

金、プラチナ、原油、天然ゴム、農産物などのコモディティ市場を中心に、仮想通貨、為替、株価指数なども幅広くカバーしています。

金融機関、商社、事業法人、ベンダー様向けにマーケット分析情報の配信業務を行っています。コモディティ市場のレポート配信サービス(法人向け)、寄稿・講演のご依頼などは、下記E-Mailまでお問合せ下さい。

マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com

OPEC総会前日でも合意できず

6月22日に石油輸出国機構(OPEC)総会、23日にOPEC加盟国、非加盟国の協議が予定されています。日本時間だと22日の17:00に始まり、20:00には記者会見が行われる予定です。

テーマは、需給バランスの正常化が急ピッチに進む中、年後半の需要期のイランとベネズエラ産原油供給のリスクにどのように対処するのかになります。技術的には色々なロジックが組み立てられますが、要するに産油水準を引き上げるか否かがテーマになります。

本来であれば既にどのような合意を行うのか事前調整が終わって然るべき状況ですが、21日の非公式閣僚級会合ではイランのザンギャネ石油相が「合意できない」と協議を途中退席するなど、未だに混乱がみられる状況です。20日にはイランも増産に理解を示していたことで増産合意そのものが流れるリスクは限定的とみられていましたが(参考:イランが小幅増産容認に態度軟化か?)、まだ状況は流動的です。



論点は幾つかありますが、1)まずは増産合意の有無、2)増産合意した際の数量、3)増産合意した場合の時間軸と、三つのポイントに対してそれぞれが複数の可能性を抱えており、かなり多くのシナリオが描ける状況になっています。

OPPECのロドリゲス事務局長は合意に自信を示していますが、イランがこのまま反対の意向を崩さず、更にイラクやベネズエラなども反対に回ると、増産協議は仕切り直しになります。次回の定例総会まで待たず、恐らく9月頃までに臨時総会を開催する方向になると考えていますが、まだこの可能性が否定できません。

増産幅は、ロシアが日量150万バレル、サウジが100万バレルなどを主張しています。その他に、オマーンからは80万バレルの提案の存在も報告されています。これ以外の数値も出ていますが、現状だとサウジの100万バレルを軸に、反発が強ければ若干水準を引き下げる妥協案で合意を目指す方向になりそうです。

時間軸は、即時増産か、3カ月後などか、段階的なものにするのか否かとなります。

いずれにしてもぎりぎりまで調整が難航する中、マーケットは十分な織り込みができていません。それは、ここ最近の原油相場が下げ一服ながらもリバウンドできない状況からも確認できます。OPEC内でも生産能力で各国の置かれた立場が大きく異なっていますが、改めて結束を示すことができるかが問われるイベントになります。

【OPEC総会スケジュール】
無題





































(出所)OPEC

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 
 

中立金利から考える金の最後の買い場

ドルインデックスの上昇が続いています。6月15日に続いて、19日、20日、21日と3営業日連続で年初来高値を更新しています。その一つの要因として、米金融政策の正常化圧力の強さがあるのは間違いないでしょう。欧州中央銀行(ECB)は年内の資産購入終了に道筋をつけましたが、その先の利上げについては未だ見通しづらい状況です。日本銀行に至っては、そもそも緩和政策修正の道筋が描けていません。着実に利上げサイクルを消化するドルに資金シフトが発生するのは当然と言えるかもしれません。

一方で、利上げサイクルには終着点が存在し、無制限な利上げが許容される訳ではありません。本質的に金利上昇は経済、インフレを抑制するものであり、どこかに限界があります。いわゆる中立金利の議論です。景気を過熱も冷却もさせない金利水準が、当面の利上げサイクルの目安になります。

この中立金利ですが、現在の米金融当局者のコンセンサスは2.9%となっています。今年3月に0.1%引き上げられましたが、ざっくりとここ最近の流れを振り返ると3%前後の水準になります。つまり、ここが一応の利上げサイクルの終着点の目安になります。

一方、現在のフェデラル・ファンド(FF)金利のターゲットは1.75~2.00%であり、中心の1.875%で計算すると、残りの利上げ余地は1.025%になります。利上げサイクルが始まった2015年時点だと、中立金利が3.3%、FF金利ターゲットが0.25~0.50%とあって2.925%の利上げ余地が残されていましたが、そろそろ利上げサイクルの終着点も意識する必要性が浮上しています。

実際にセントルイス連銀ブラード総裁は5月31日に東京都内で開かれたセミナーで、中立金利が低いとして、予見できる将来は金利を現行水準に留めるべきだと主張しています。サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁も6月1日、あと3回の利上げで中立金利に到達するとして、暫くは中立金利を上回る水準までの利上げを想定するも、経済成長抑制に作用し始めるとの見通しを示しています。

問題は、この中立金利は把握するのが極めて難しいことです。例えば、実質経済成長率が1.8%、PCEインフレが2.0%と想定されていることを考慮すれば、名目成長率から3.8%との推計も成り立ちます。この場合だと、利上げ余地は現在の1.025%から1.925%まで跳ね上がります。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)も分からないと本音を隠していません。

ただ確かなことは、利上げ余地が乏しくなってくれば、ドル相場高・金相場安を進める余地は限定されることです。金市場に限定しても、概ね利上げサイクル終了時期と前後して、金相場は底入れから上昇トレンドに転換する可能性が高まります。今後1~2年の金価格の下げた所はボトム圏になり、中長期投資家にとっては絶好の買い場になるというのが、過去の米金融政策と金価格との関係から導かれる価格見通しになります。

そして、トランプ政権が誕生した2017年以降の議論は、こうした米金融政策の飽和状態を待たずに、トランプ政権発のドル安圧力が金相場の底入れを前倒しするか否かとの視点で展開されています。つまり、本来であれば金相場の底入れは2019~20年頃に訪れることになりますが、通商リスク・財政リスクなどが米金融政策環境と関係なくドルを押し下げ、金価格を十分に押し下げない可能性が想定されています。

2017年型の相場環境を想定すれば底値把握のための時間は短く、それと異なる相場環境を想定すれば今後1~2年で安値を買い拾えば十分ということになります。

無題
















【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 
      

イランが小幅増産容認に態度軟化か?

6月22日に石油輸出国機構(OPEC)総会が迫っていますが、ここにきて妥協点を探る動きが活発化しています。イランは米国の増産要請に対応するためのサウジ主導の増産協議に強い難色を示しており、イラン国営TVでもザンギャネ石油相は「(増産の)合意はできない」との見方を示していました。

しかし、20日のCNNのインタビューでは、協調減産の遵守率が150%に達している「over-compliance(過剰な合意遵守)」状態にあることを前提に100%水準まで遵守率を引き下げることには理解を示しています。

CNN=Iran's oil minister blames Trump for high oil price

無題















(画像出所)CNN

米国の増産要請に対する対応ではなく、協調減産の遵守率適正化と言う観点であれば、新たな合意形成ではなく既存合意を順守する形で実質的な増産が可能との理解になります。あくまでも可能性を示したに過ぎませんが、OPEC総会直前に、しかも米系メディアに対して態度を軟化させていることは注目すべきでしょう。

仮に減産合意遵守率100%を目指すのであれば日量100万バレル規模の増産が要求されますが、エクアドルのペレス・エネルギー相は50万~60万バレル規模の増産合意の可能性を示唆しています。イランのザンギャネ石油相はインタビューにおいて、実際のどの程度の増産を行うのかは「depends on discussion(協議次第)」と発言していますが、最大で100万バレル、下限で50万バレル程度で見ておけば十分と思われます。

ロシアのノバク・エネルギー相は日量150万バレルの増産主張を繰り返していますが、9月に再調整を行うなど、ある程度の段階を踏んだ政策調整にも理解を示しています。まだイラン産原油供給がどの程度まで落ち込むのかも分からない中では、150万バレルの増産合意だとWTI原油ベースで1バレル=60ドル割れが警戒されますが、イランの態度軟化で全会一致での増産合意も見通せる状況になる中、サウジアラビアなどが強引に過大な増産合意形成を目指すリスクが軽減されています。

ちなみに、こうしたウィーンでの動きとは別に、クシュナー米大統領上級顧問が中東を歴訪し、20日にサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談を行っています。

Reuters=White House adviser Kushner, Saudi crown prince meet on Middle East

ホワイトハウスの発表だと、両国の関係強化、パレスチナ自治区ガザへの人道支援などについて協議が行われた模様ですが、ここでも原油価格について米国サイドから何らかの要求が行われていると、OPEC総会におけるサウジの動向に微妙な影響が出てくるかもしれません。これは憶測のレベルですが、OPEC総会直前の会談は、どうしても特別な意味が出てきます。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 
     

ダウ工業平均株価の銘柄入れ替えを考える

ダウ工業平均株価の算出を行うS&P Dow Indiciesは6月19日、ダウ工業平均30種の銘柄入れ替えを発表しました。2015年3月にAT&Tを除外し、アップルを組み入れてから、実に3年6カ月ぶりの組み換えになります。6月26日の取引開始前が予定されています。


ダウ平均に関しては、従来から複合企業企業の形態が時代遅れとされ、「解体論」から株価が低迷していたGEの除外が噂されていましたが、ついにその時が来ました。GEは1896年にダウ工業平均株価が誕生した当時にダウに採用され、その後は一時的に除外された時期もありましたが、米国を代表する企業として僅か30銘柄しか選ばれないエリート倶楽部の中で1席を確保し続けていました。

しかし、近年は事業が分かりづらく動きも鈍い複合企業の形態は投資家に嫌われ、専業化した企業をスピンオフする解体の道に進んでいましたが、S&P Dow Indiciesはもはや米国経済、米国株式市場を代表する銘柄として、GEは適していないと判断を下しました。

プレスリリースをみると、「消費者、ファイナンス、ヘルスケア、テクノロジー企業」が「工業企業」よりも米経済における重要性を増していることが報告されています。
Since then the U.S. economy has changed: consumer, finance, health care and technology
companies are more prominent today and the relative importance of industrial companies is less. Walgreens is a national retail drug store chain offering prescription and non-prescription drugs, related health services and general goods. With its addition, the DJIA will be more representative of theconsumer and health care sectors of the U.S. economy. Today’s change to the DJIA will make the index a better measure of the economy and the stock market.

こうした中、代表的な工業企業であるGEを除外し、新たにドラッグストアで世界最大のウォルグリーン・ブーツ・アライアンスを採用することになりました。これによってダウ工業平均は米経済構造の変化に柔軟に対応していくことになります。
The DJIA is a price-weighted index, and the range of prices among its 30 constitutes matter. The low price of GE shares means the company has a weight in the index of less than one-half of one percentage point. Walgreens Boots Alliance’s share price is higher, and it will contribute more meaningfully to the index. It will also help the index better represent the U.S. market and economy. Walgreens Boots Alliance, which is headquartered in Deerfield, IL, operates as a pharmacy-led health and wellbeing company.
また、技術的な視点では、GEの株価がダウ全体に占める比率が低下しており、ダウの動向に殆ど意味を持たなくなっている影響も指摘されています。ダウは時価総額ではなく各企業の株価の単純平均を起訴としますが、株価が低い企業は重要性が低下することになります。このため、もはやGEの株価が急伸しても急落しても殆ど意味がない状態になっていましたが、より株価水準の高いウォルグリーン・ブーツ・アライアンスを組み込むことで、同社の株価動向はGE以上にダウに対して大きな影響を及ぼすことになります。

マーケットでは、時価総額が高く、米経済における重要性を増すフェイスブック、アルファベット、アマゾンといったハイテク企業の組み入れを予想する向きが多い状況でしたが、これらの企業がダウに採用されるにはもう少し評価が定着するまでの時間が要求されるようです。

【GE】

ge















(画像出所)Yahoo!ファイナンス

【ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス】

wba















(画像出所)Yahoo!ファイナンス

上は、GEとウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの過去10年分のチャートです。ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスは2014年に合併で誕生したためめ、データは14年以降になります。

【Amazon】
amzn
















(画像出所)Yahoo!ファイナンス

そしてこちらはAmazonです。仮にAmazonが採用されていれば、ダウに対しては強力なけん引役になることが期待できましたが、少なくとも1年程度は組み換えは行われなさそうです。

ダウは30銘柄あれば米経済、市場を正確に反映できるとの思想で構成されていますが、銘柄数が少ないだけに、Amazonのような急騰銘柄が採用されればインパクトも大きかったはずですが、組み換えによる上昇ペース加速というストーリーは先送りされました。

もっとも、アマゾンも株価は1,700ドル台とGEとは逆にダウに必要以上の影響を与えてしまうため、いずれにしてもダウに採用される前には分割が必要でしょう。

ちなみに、銘柄入れ替え前後で株価の急伸、急落はダウ、GE、ウォルグリーンのいずれに対してもありませんので念のため。過去のデータでも影響は確認できません。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 
    

南アの停電に反応しないプラチナ相場

世界最大のプラチナ生産国南アフリカでは、電力供給問題が浮上していますが、プラチナ相場は特に反応していません。6月14日から散発的に停電が発生しており、こうした状況は鉱山操業にも大きなリスク要因になり得ますが、マーケットでは特に材料視されていない模様です。

電力会社Eskom(エスコム)では、1)冬の暖房用電気需要に加えて、2)労使トラブルが、電力需給を歪めています。

6月14日には「industrial acition(労働争議)」の影響で電力供給がタイト化していることが報告されています。


同日午後5~8時にかけては、エアコンやプールのポンプなど必要性の低い電気機器のスイッチを切ることが要請されています。


そして、計画停電の開始が報告されています。


15日以降も断続的に停電が発生していますが、週末を挟んでのプラチナ市場では、こうした電力問題は材料視されていません。

ただ、今後も厳しい状態が続く見通しが示されています。現在、Eskomの労働組合は賃上げ交渉中であり、全国鉱山労働組合(NUM)は当初の15%の賃上げ要求に対して、インプレ率プラスアルファの賃上げに修正して交渉を継続する予定です。議会との関係で交渉は一時停止していましたが、19日から再開される見通しであり、ここで交渉がこじれると不法ストが改めて電力供給を不安定化させる可能性が高まります。この辺の動きは南アフリカ通貨ランドではネガティブ視されていますが、プラチナ相場は無反応です。

プラチナ需給が、南アフリカの減産を一因にタイト化見通しにあることを考慮すれば(参考:GFMSは今年、2011年以来のプラチナ価格上昇を予想)、期近主導の上昇も正当化できるところですが、実際には完全な逆サヤ(期近安・期先高)状態で寧ろ期近の上値の重さが目立つ状況です。

米中貿易摩擦に対する警戒感の影響も指摘できますが、従来から逆サヤ状態に変化はなく、そもそも「プラチナ相場は需給に関心があるのか」が疑問視される状況にあります。電力問題で上昇するのであれば、やはり期近から順サヤ化へのシフトを期待させる動きが必要でしょう。

【NYMEXプラチナ先物 フォワードカーブ】
無題





















(出所)Reuters

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

******************************************

マーケットエッジ(株)では、コモディティ市場と金融市場のレポート配信の他、講演のご依頼も承っています。まずはご相談下さい。

【お問合せ先】
マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com 
    
記事検索
 
amazon.co.jp
QRコード
QRコード
プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物・FX会社の営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

【URL】
マーケットエッジ株式会社

【E-mail】
kosuge.tsutomu@outlook.com

【SNS】
Twitter

【連絡先】
E-mailでお願い致します。相場動向に関する質問への個別対応は行っていませんのでご了承下さい。
小菅努のコモディティ分析
小菅努のコモディティ分析 ~商品アナリストが読み解く「資源時代」

会員制の有料メルマガです。コモディティの基礎知識から専門的な分析まで提供しています。1,944円/月、週2回以上の発行です。

詳細や購読のお申し込み方法は
http://foomii.com/00025
をご覧下さい。
アナリストの視点
Yahoo!ニュース コモディティアナリストの視点

Yahoo!ニュースに不定期で寄稿しています。

過去のレポートはこちら をご覧下さい。
sponsored link
Twitter
sponsored link